D.C.Ⅱ 二次創作ショートストーリー バレンタインSP ~朝倉由夢編~「素直になりたいバレンタイン」

今日は、バレンタインデー。
女子が好きな男子にプレゼントを渡す日だ。
今日、早く起きしてしまった俺はやはり期待しているんだろうか…

「はは…由夢からは、いつも通りデパートで買ったものを貰えるかな」

由夢の場合は、手作りチョコは期待出来ない。

「あいつ…不器用だからな~」

そうやって、料理下手な由夢の一生懸命作って失敗している姿を想像して
にやけていると、芳乃家の階段を昇って来る由夢の足音が聞こえた。

コンコン。

そして、ノックの音が聞こえる。

「兄さ~ん?起きてますか~?」
「起きてる」
「わ、珍しい…」
「入って来てもいいぞ?」
「や、起きてるなら良いですよ」
「朝御飯出来てたりするのか?」
「うん。お姉ちゃんが起して来いって」
「わかった。今行く」

制服に着替えてリビングに下りると、味噌汁と焼き魚の香りがして来た。
ちなみに、音姉の場合は大体が和食だ。
俺が作る時は洋食が多いので、バランスも考えての事だろう。
まぁ、たまに一緒に作るときもあるんだけどさ。

「あ、弟くん。おはよう♪焼き魚入れるお皿用意してくれる?」
「おはよう。四角い奴ね…了解」

これもいつものやり取り…が。何故か視線を感じる。
視線の元を辿って行くと、その先に由夢がいた。

「どうした?由夢」
「お姉ちゃんと兄さん仲良いな~って思って…」
「何言ってるんだよ…いつもの事だろ?」
「そうなんだけどさ…何か…羨ましいなって…」
「えっ?」
「や!何でもないです…」

そう言うと由夢は、下を向いてしまった。

(何なんだ?一体…)

イマイチ由夢の心境を汲み取れなかったので、
俺はあまり気にしない事にした。

朝食を食べ終わり、俺はいつも通り外へ出た。

「弟くん、忘れ物無い?」
「あぁ」
「音姉は?」
「大丈…あっ!ちょっと待って!」

そう言って、音姉は朝倉家へと入って行った。
数分しないうちに出て来ると、その手には小さな包みがあった。

「はい、これ…バ・レ・ン・タ・イ・ン♪」
「サンキュー、音姉」
「どういたしまして♪」

そう言ってバレンタインチョコを渡してくれる音姉。
これも毎年恒例の行事だ。しかし…

「……ヘラヘラしちゃって……兄さんのバーカ」
「ん?由夢、今何か言ったか?」
「何でもありませんよ~だ!」

そう言うと由夢は、さっさと歩いて行ってしまった。

「由夢ちゃん、どうしたの?」
「さあ?(何怒ってるんだ?由夢の奴…)」

学校に着く前に、珍しく小恋とななかが前を歩いていたので、
声を掛ける事にした。

「小恋にななか…おはよう!」
「よ、義之!お、おはよう…」
「あっ、義之くん!おはよ~♪音姫先輩に由夢ちゃんもおはようございます♪」
「おはよう♪白河さん、月島さん」
「おはようございます。白河先輩、小恋先輩」
「小恋、どうした?具合でも悪いのか?」
「えっ!?ううん!そんなこと無いよぉ~…大丈夫!大丈夫!」
「なら良いんだけど…無理はするなよ?」
「うん、ありがとう」
「ふふふ~♪今日は楽しみにしててね!よ・し・ゆ・き・くん♪」
「ははは…分かったよ。じゃあ、ついでだから一緒に行こうか?」
「うん」
「そうだね♪」
「音姉も由夢も良いよな?」
「うん♪みんな一緒の方が楽しいしね」
「別に…兄さんの勝手だし」
「由夢ちゃん…もしかして、ヤキモチ焼いてる?」
「そ、そんな事無いです!」

そう言って由夢は、先に歩いていってしまった。
俺を含めて他のみんなはそれ追う様に歩き出した。

昼休み。
俺が、学食に行こうと席を立った時、教室の入り口に
由夢が立っているのが見えた。

「お~い、由―」
「よ~しゆ~きくん♪」
「義之~、ちょっと良い?」

由夢に呼びかけようとした時、丁度ななかと小恋の声が聞こえた。

「あぁ、ななかに小恋か。どうしたんだ?」
「ちょっとね~♪」
「昼食食べ終わってからで良いから付き合ってくれないかな?」
「いいけど…そうだ。それなら昼食も一緒に行かないか?」
「ホント?いいの?義之」
「あぁ。あと、由夢も誘いたいんだけど良いかな?」
「うん」
「そういう事だから由夢~!一緒に…ってあれ?」
「どうしたの?義之くん」
「さっきまで扉のところに由夢が居たんだけど…」
「う~ん…居ないみたいだね?」
「おかしいな~…ま、いっか…じゃ、学食行こうか?」
「そうだね」
「れっつご~♪」

学食を食べ終えた俺達は屋上に来ていた。
季節は冬…とても寒い…

「なぁ、中の方が良かったんじゃないか?」
「あはは…ちょっと…寒いね」
「まぁ、ちょっとだけだから♪」

ななかはそう言うと、一歩前に出て小さな小包を差し出した。

「じゃ、まずは私から♪義之くんにプレゼント~♪」
「これ…バレンタインチョコ?」
「そうそう♪義之くんにはバンドでお世話になったからね♪」
「あはは!そんな事気にしなくて良いのに。でも、ありがとう。嬉しいよ」
「どういたしまして♪さて、次は小恋の番だよ♪ほ~ら!」
「わっ!っとと…あは、あはは…」

小恋がななかに背中を押されて前に出る。顔は、真っ赤だ。

「あの…あのね義之、これ手作りで自信無いけど…良かったら…その…」
「あはは。ありがとうな、小恋。おっ、クッキーか…」
「うん。ダメ…かな?」
「いやいや!チョコばっかりだったから、何か新鮮だよ」
「あれ?義之はもうななか以外にチョコ貰ったの?」
「音姉だよ。毎年朝一でくれるんだよな…」
「そうなんだ…残念」
「何言ってるんだよ?俺は小恋から貰えて嬉しいんだからそんな顔するなよ」
「うん。ごめん」
「よろしい」
「ふ~ん…義之くんってやっぱり優しいんだね♪」
「そ、そんな事無いけど…」
「そんな照れ屋さんな部分を見せ付けられると…」
「?」
「ぎゅう~♪ってしたくなっちゃうね♪」

ななかが俺の胸に飛び込み抱きついてきた。

「わっ、ちょっちょっと待った~!」
「ん?どうしたの義之くん?」

ななかが抱きついた時、一瞬で視線がこちらに集まったのが分かった。
いや、チョコ渡された時から何となく気付いてはいたけど…

「ごごごごごごごごごご………」(←周囲に居た男子の負のオーラ)
「い、急ぎますんで~」
「むぅぁぁぁ~~~てぇぇぇ~~~!!!」
「に、逃げろぉぉぉ~~~!!」

つまりは、こういう事だ。
殺されかねないオーラを放った集団をやり過ごし、
命からがら教室に戻って来た時は、もう午後の予鈴が鳴っていた。

放課後。
俺は、直ぐに帰る気にはならず、教室に帰宅部の波が落ち着くまで待っていた。
ちなみに、雪月花のうちの雪と花からはやはりバレンタインチョコを貰った。
杏のプレゼントはは、何と1万近い高級な代物らしい…

「ホワイトデー、3倍返し期待しているわね。ふふ…」

という恐ろしい台詞を残して帰って行った。
花咲茜の方は…まぁ、とにかく巨大だった。

「はは…どうやって持ち帰れって言うんだよ…この大きさ」

友人達の熱烈なバレンタインプレゼントにため息をつきながらも、
そんな自分は幸せ物なんだなと俺は思った。
そんな考え事をしていた時…ふと、教室の扉から由夢が入ってくるのが見えた。

「よっ、由夢。どうしたんだ?」
「兄さんこそ、まだ帰っていなかったんですね」
「あぁ、ちょっと帰る気が起きなくてな」
「そうですか。ところで、このチョコレートは何?」
「茜からなんだけど…持ち帰れないだろ?コレ…」
「でか過ぎますね…ありえないです」
「はぁ…俺にどうしろってんだ…」
「それは…全部食べるしかないんじゃない?」
「は…ははは…由夢も手伝ってくれない?」
「ダメですよ。花咲先輩の気持ちなんですから、ちゃんと受け取らないと…」
「………はい」

数十分後…全部食べ終えた俺は、机に突っ伏した。

「ご苦労様、兄さん」
「死ぬ…死ねる…」
「あはは…あれだけ食べたらさすがにきついですよね」
「ところで、由夢は帰らなくて良いのか?俺は、しばらく動けそうに無いんだが…」
「や、今日は特に見たいテレビも無いし、たまには兄さんと一緒に帰りたいなって」
「そっか…ありがとな。悪い、ちょっと寝るわ。下校時刻になったら起してくれるか?」
「良いですよ」

「――ぃさん、起きて下さい」
「………う、う~ん」
「兄さん。起きて…起きてよ」
「ん?…って、うわっ!」
「ひゃう!?」

目が覚めると、由夢の顔が目の前にあり、俺は思わず飛び退いてしまった。

「び、びっくりした~」
「ビックリしたのはこっちだ…何で起きたら目の前に由夢の顔があるんだよ」
「あっ、酷いな。兄さんが起してくれって言ったから待っていたのに」
「えっ?…あ、そうか…ごめん」
「別にいいですけど…兄さんの可愛い寝顔も見れたし」
「ん?何か言ったか?「別に良いですけど…」の後が良く聞き取れなかった」
「や、何でもないですよ?」
「さて、そろそろ帰るか?」
「あっ、待って!兄さん…帰る前にちょっと良い?」
「なんだ?」
「う、うん…コレなんだけど…」

そう言って由夢は、俺に1つの小包を差し出した。
ラッピングは、綺麗に施されているが、所々テープで張りなおした部分がある。
不器用にも自分でラッピングしたようだ。

「もしかして…バレンタインの?」
「うん、チョコレート…なんだけど…」
「手作り…か?」
「う、うん」
「ゆ、由夢の手作りかぁ~」

俺は、ついいつもの癖で嫌そうな顔をしてしまった。

「………ひどいよ…兄さん…」
「あっ!?ゆ、由夢!!」

俺の呼び止める声も聞かずに由夢は走り出した。
俺も、その後を追っていったが、桜公園の辺りで見失ってしまった。

「何処に行ったんだ?由夢の奴…」

あちこち探し回ったが、依然由夢の姿は見当たらなかった。
俺は、ベンチに座り由夢から貰ったバレンタインチョコを取り出してみた。
チョコレートは、不器用なハート型をしており、所々色ムラもあったが、
俺はそれを迷わずに口にした。
最初は、チョコレートの苦味に支配され、少し顔をしかめたが、
徐々に甘さが口の中に広がっていった。

「うん、ちょっと不思議な味だけど…美味いな、これ…」
「はは…夢に謝らないとな……って、あれ?」

そう言って立ち上がろうとした時、ひらりと一枚の紙が落ちた。
拾い上げて、読んでみるとこう書いてあった。

「誰よりも兄さんが好きです。これからもずっと一緒に居て下さい」

由夢の几帳面な字で綴られたその文字に、俺は自分のバカさ加減を痛感した。

(ごめんな…由夢。いくら謝っても謝り足りないけど…今は、とにかく謝りたい)

数時間色々探し回り、桜の公園に戻って来た。

「まさかな…」

色々聞き込みをしているうちに、ある1つの情報を得た俺は、今桜の公園の中心…
一際大きな桜の木を目指して歩いていた。
その情報とは…”巨大な桜の木の下で、告白した男女は結ばれる”という噂。

(居てくれよ…由夢…)

そう祈りながら歩いていくと、目の前に少し開けた場所に出て、
その中心に一際大きな桜の木があった。
そして、その下に…由夢は居た。

「由夢!!」
「に、兄さん!」
「探したぞ!こんなところに居たんだな」
「今更何を…」
「ごめん!」

由夢の言葉に被せて、俺は大声でさえぎり謝った。
由夢は、びっくりしているようだった。

「本当にごめん!」
「もう…良いですよ。しっかり反省してくれているみたいですし」

由夢はふっと表情を崩し、微笑んでくれた。

「ありがとう…チョコ、ちゃんと食べたよ」
「ど、どうでした?」
「最初は苦かったけど、その後にほんのりとした甘みが広がって美味しかったよ」
「そうですか…良かった」
「うん。だから、由夢のチョコを食べずに嫌そうな顔してごめんな…」
「別に…あっ、そうだ…悪いと思っているならキスして下さい♪」
「え、えぇ~!?キス!?」

俺は、思わずびっくりしてしまった。

「そうですよ…兄さんは純情な乙女の心を踏みにじったわけですから…償ってもらわないと」

そう言って由夢は、いたずらっぽい笑顔を浮かべていた。
俺は、その仕草を素直に可愛いと思った。だから…

「やれやれ、今回は俺の負けだな…今回ぐらいは俺も素直になろう」
「えっ?」

俺は、由夢の両肩に手を置いてじっと彼女の瞳を見つめる。

「由夢…」
「は、はい」
「俺は由夢の事可愛いと思うし、好きなんだ。キスしても…良いかな?」
「あっ…わ、私も兄さんの事が好きです。だから…お願い」

その返事を聞き、俺は由夢と少し長いキスをした。

そして、そのキスが終わった後、由夢は可愛い笑顔でこう言った。

「兄さん、大好きだよ♪」

Fin

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